TVアニメ「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」公式サイト
その後書籍化、漫画化、アニメ化に加えドラマCDや有名メーカーとのコラボ商品制作など、盛んにメディアミックス化されている。
TVアニメは2019年10月に第一部が、2020年4月に第二部が放映され、現在第三部の制作が決定されている。
正式名称は「本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~」だが、以下「本好き」と略す。
今回は「本好き」から学んだ仕事術について述べたいと思う。
「本好き」のあらすじと楽しみ方の大前提
本が大好きで図書館司書に就職が決まって大喜びしていた女の子・本須麗乃(もとすうらの)が、念願の就職を前に事故でなくなり、本への強い情念で(?)転生してしまう。
病弱な少女・マインの体に転生した麗乃が本を求め新たな世界をさまようも本が見当たらず、「ないなら作ればいいじゃない!」の精神で本に囲まれた生活を作り上げていく奮闘ストーリー。
中世ヨーロッパのような世界観で、街並みや日常生活を想像するだけでとても楽しく、世界観とマインを取り巻く素敵な人々が織り成す物語を楽しめる作品。
こうした楽しみ方が大前提で、今回の切り口のように仕事術を学ぼうと考えながら読む必要は全くない。むしろそんなこと考える暇もないくらいのめり込んで、続きが気になってどんどん読み進めてしまう。そんな推進力のある作品なので、シンプルに面白く、それだけの理由でお勧めできる。
しかし、その大前提の上で、「本好き」の説得力を形作っている構造や社会を生き抜くための方策について馳せた思いを述べたいと思ったのである。
自分の持っている武器で夢を形にするマイン

”出典:TVアニメ「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」公式サイトⒸ http://booklove-anime.jp/story/ ”
マインは「本を読みたい」が原動力になっている少女だ。
彼女の本に対する熱い思いは物語の中で一貫して示されている。
しかし、マインは病弱で家も貧乏。どう考えても本を読むという願いは叶わないような環境に転生してしまったのだ。
新しい世界での暮らしを諦めかけたマインだったが、諦めるのは自分に出来ることを試してからでも遅くないと思い一念発起する。
「せっかく生まれ変わったのだからこちらの世界でも本を読みたい」がマインの行動規範である。
新たな世界には新たな物語があるはず、それならば読みたい。そんな思いのみで前世の記憶や知識を頼りにマインが頑張る姿を見ていると、自分のやるべきことに取り組もうというやる気が湧いてくるのだ。
私たちも各々の事情に応じた「やるべきこと」を抱えているように、マインもまた「やるべきこと」と「やりたいこと」の狭間でもがいている。
本を作りたいけど道具も資金もそもそも体力もない、子供だから意見も聞き入れてもらえない……そんなところから出発するマインの本作り。そして本作りが軌道に乗り始めると、発生するのはさまざまなしがらみ。
現実世界でも、そんな展開に心当たりのある人は多いだろう。転職したいと漠然と考えているけれど、新天地で通用しそうなスキルが思い浮かばない、転職活動の資金や時間も足りない。はたまた新しい事業を始めてみたけれど、波に乗ってきたと思った矢先に人間関係や責任といったしがらみも増え、身軽さは失われていく……。
ここでは仕事を例に挙げたが、プライベートな問題に通じるところも多々あるだろう。
そこで、同じように大変な状況の中で懸命に戦っているマインの姿を見て欲しい。
虚弱なマインが頼りにできるのは前世の記憶や経験だけ。しかも、取り巻く世界が違えばその知識もまたそのままでは通用しない。でも、だからこそ、上手く使えば有効な武器になるのだ。
マインは現代社会という異なる世界で培ったノウハウで、新しい世界での困難を新たな切り口から解決していく。そしてそれは麗乃が特別に優秀だったとか、そういうことではない。もちろん本の虫だったので知識量は豊富だが、チート転生と言えるほど天才的な才能があったという描写はない。
ただ自分の好きなものを追い求め、そのために自分の持てる知識を総動員しただけだ。
そう考えると、マインの物語を楽しく追いかけていたはずの「現実の自分」にも出来ることがあるように思えてくる。
苦手な科目の勉強にも、得意科目の考え方や勉強方法を当てはめれば上手くいくかもしれない。そのまま当てはめて上手くいかなかったとしても、少し応用すれば解決策の糸口が見えてくるかもしれない。
「趣味を仕事にするのはやめた方がいい」「そうはいっても好きな仕事をやりたい」こうした誰もが抱く葛藤も、なるべく自分の好きな世界と同じやり方で仕事を眺めれば少しは昇華できるかもしれない。
そうした一筋の光明を見せてくれるマインの活躍がそこにはある。
「やりたいこと」と「やるべきこと」の狭間で

”出典:TVアニメ「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」公式サイトⒸ http://booklove-anime.jp/story/ ”
商人との駆け引きを経て材料や資金を得る術を確保したマインは本作りという目標に向かって邁進する。そしてそれを生業とできる状況を得たマインは、付随する事業にも着手する。
それと同時に自身の体調とも向き合う必要が生じ、自分の健康のために生活を変える決意をする。
新たな暮らしは時間管理のしっかりしたもので、本作り以外にも自分の立場や環境を守るための義務も生じる。「やりたいこと」と「やるべきこと」がだんだん乖離し、自由に使える資金は増えて出来ることの幅も広がったが、自由に使える時間は減る一方。
そんな生活の中で、マインはちゃんとわかっている。自分のやりたいことは「本を作る」こと以上に「本を読むこと」。
本が簡単に手に入る環境ではなかったから、本を読むためにまず本を作る必要があったというだけで、それは主目的ではない。あくまで目標の第一段階であって、本作りに従事したいわけではない。似ているからこそ勘違いしやすいし、また自分を納得させやすくもあるのだが、マインはそこを正確に理解している。
だからこそ、選択を迫られたときに「自分にとって有益な未来」を手繰り寄せるための判断を取ることができるのだ。
マインのように、自分の望みを正確に捉えられている人は果たしてどれだけいるのだろうか?選択肢の豊富な現代社会では、ピンポイントな望みを見つけることも難しいし、そこまで正確な望みを強く持たずとも楽しく生きていく道がたくさんある。それは恵まれたことだろう。しかし、そんな環境にいても「やりたいこと」に明確に向かっている実感がなくてモヤモヤしている方も多いのではないだろうか。
そんな方はぜひ、「本を読みたい」の一心でひたむきに日々を送るマインの奮闘劇を眺めてみていただきたい。
「やりたいこと」と「やるべきこと」の兼ね合いをどのようにすればいいのか、きっとヒントが見つかることだろう。
現実に立ち向かう気力をくれる「本好きの下剋上」

”出典:TVアニメ「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」公式サイトⒸ http://booklove-anime.jp/story/ ”
趣味として読書を楽しんでいたはずなのに、自分もやるべきことを頑張ろう……と思わせてくれる力が「本好きの下剋上」にはある。
物語が進むにつれ、次第に交渉術や時間管理術を身に付けていくマイン。本を読む時間と機会を捻出するため、自分の「やるべきこと」をこなす方法を模索するマインの姿は、日々の活力をもたらしてくれるだろう。
そしてそんなマインの心を支えてくれているのは家族への想いだ。マインの奮闘ぶりは、確かに応援者を増やしていく。現状に不満があっても、どんな逆境に置かれても、自分の頑張りを見て密かに応援してくれている人はいるものだ。
「本好きの下剋上」から学ぶ仕事術のまとめ
以上、本好きの下剋上から学ぶ仕事術でした。
今回は仕事に対する考え方や、やりたいこととやるべきことの折り合いのつけ方についてお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?
もっと具体的な交渉術や処世術、タスク管理法についても学べるがたくさんある作品です。
原作はとても長大なので、これを読んで興味を持たれた方はまずアニメを見てみるといいかもしれません。音楽も素敵で、「本好き」の世界観を楽しむことができます。
ただアニメ化は現在第三期の制作が予定されているということもあり、原作の最終回までの内容は描かれていません。アニメから入って、もっと深掘りしたい、続きが気になる……と思われた方は、ぜひ原作も読んでみてください。
書籍化がなされていますが、現在も「小説家になろう」のサイトで無料公開されていますので、いきなり小説から入るのももちろんオススメです。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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